新井 学 准教授「心理学b」
— 体験に基づき日常に直結する心理学を学べる授業 —
氏 名:新井 学(あらい まなぶ)
所 属:経済学部
職 名:准教授
専門分野:心理学、心理言語学、第二言語習得
対象者:経済学部1~4年生、文芸学部?法学部2~4年生
授業形態:講義
実施学期:2019年度後期
履修者数:52 名
※ページ内のpoint!は授業のポイントです
授業内容と取材当日の授業状況について
本授業は、経済学部の自由設計科目に配置された教養科目であり、経済学部1~4年次および文芸学部?法学部の2~4年次にも開講されている授業である。社会の中で人間の行動を決定する心の働き、メカニズムを実証的結果とともに学び、特に行動経済学、社会心理学、進化心理学の研究成果を通して人間の心と行動に関する理解を深める授業である。
取材当日(2019年11月6日)の授業は、以下の流れで進められた。
冒頭で先生からハンドアウトが配付されたが、沙巴体育英語で書かれている点が注目であった。まずは、前回授業のリアクションペーパーに対し、全員で共有すべき情報や質問に対する回答がなされた。回答においては、先生の実体験をもとにした説明が加えられており、学生に分かりやすいように配慮されていた。
つぎに、スライドでクイズが出され、本日のテーマ「『経験する自己』と『記憶する自己』」の導入となるクイズが出された。「中古の音楽事典を買うとしたら、ほぼ新品だが収録が10,000語のA事典、表紙が破れているがほぼ新品で20,000語収録されているB事典、どちらを購入するか?」という内容で、学生たちは悩みながらも各々に手を挙げていた。講義形式の授業ではあるが、学生に手を挙げさせて授業への参加を促し、意欲的に学びに取り組めるようなしかけであると感じられた。
ここから講義が始められた。ハンドアウトの英語記載に対し、説明は日本語で行われ、学生がメモを取る時間も与えながら話すスピードを調整している様子が印象的であった。また、資料の番号を示しながら説明したり、資料と同様の図をスライドで見せたり、という配慮がなされているため、沙巴体育英語で書かれていても学生に混乱が出ることもなく授業が進められていた。
講義の合間にも、「1日1本の注射を毎日刺さなくてはいけないが、2本減らしてもらえることになった。20本が18本になるのと6本が4本に減るのと、同じ価値を感じるか?」「冷たい水に60秒間手を入れるのと、90秒手を入れるが最後の30秒は少しだけ暖かい水に手を入れる方と、どちらなら繰り返してもいいと感じるか?」など、随所に学生に対してクイズが出され、講義形式ながらも学生との距離の近い授業が繰り広げられていた。
教員インタビュー(Q&A)
Q.授業のポイントを教えてください。
A. 英語で書かれた資料を配付していることです。この他、リアクションペーパーと出席管理をQRコードの読み込みによって、スマホで記入してもらう点もポイントです。
英語で書かれた資料を配る点については、心理学の研究成果の多くは英語で発表されているため、原典からの引用などを含め英語で触れていく方が齟齬なく学ぶことができると考えているからです。特に専門用語は複数の日本語訳が存在したり、難解な訳を与えられたりすることがあり、多くの場合オリジナルの用語を覚えてしまった方が実用性が高いと感じます。学生たちの英語の勉強にもつながると思うし、授業では資料に沿って日本語で説明しているので、混乱は起きていません。原本にあたりながら授業を受けてほしいという気持ちを込めています。
QRコードによるリアクションペーパーの提出に関しては、その日に行った授業に関する質問と、授業内容と関連づけることのできる自分自身の経験を自由記入してもらう形式にしています。最近の学生はスマホで入力する方が早いですし、自由に意見を言える環境にしたくてこのような方法にしました。学生のコメントは次回の授業の冒頭で紹介したり、質問には回答したりしています。学生からも「自分のコメントが紹介されると嬉しい」と聞いたので、自分が授業に関わっている、という直接的なつながりが感じられ、より授業に興味を持って臨めると思っています。
Q. 授業への心がけを教えてください。
「心理学を実学だと感じてもらうこと」を常に意識して授業を行っています。そのため、学生生活や学生の知っていること等、身近な事例を出して説明するように心がけています。心理学を学ぶことで学生たちがよりよい生活ができるようになる、といった心理学を学ぶ有用性を感じられる授業にしたいと思っています。
この他、授業では「体験して学んでもらう」ことも心がけています。クイズを出し、学生たちに手を挙げてもらっていますが、「はめられた!」と学生からよく言われます(笑)。なぜその選択をしたのか、体験した後に説明すると、「自分の問題」として自然と興味を持って聞くことができます。このように、意欲的に学びに取り組めるようなしかけを行っています。
Q. 授業準備の詳細について教えてください。
A. 配付用のハンドアウトと、補足説明のスライドを準備します。ハンドアウトは「1枚のみ」と決めています。私の留学時代に経験した授業スタイルであり、ただノートをとるよりも、要点が記載された1枚の用紙にメモを取る方が理解しやすいと感じたことがきっかけです。ノートをとりながら授業を受けることは難しいですし、このような用紙に書き込むスタイルが安心感もありつつ、授業を聞かないと!という緊張感もあり、いいバランスが取れると思っています。
また、毎回の授業で学生たちが書いてくれるコメントを読んで、回答も準備しておきます。授業回数を重ねるごとに学生たちが自身の悩みを正直に書いてくれるようになったりして、回答にも頭を悩ませることもあります。でも、そうした悩みこそが学習のモチベーションになるので、できる限り答えてあげたいと思っています。
Q.学生への期待を教えてください。
A. 心理学は、学生みんなのこれからの人生に影響を与えうる内容を取り扱うものだと思っていますし、沙巴体育の学問とかかわりがあると思っているので、卒業前に全学生に1回は受けてもらいたいと思っています。
この授業で学んだことを活かして、よりよい選択?決断ができた!という報告を学生から受けると幸せに感じます。
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業を履修したきっかけは何ですか?
A. 心理学や人の気持ちなどに興味があり、教職の授業で「青年心理学」を受講し、もっと学びたいという気持ちがあったので、この授業を履修しました。
A. 心理学がもともと好きで、「心理学」という名前のつく授業はすべて履修しています。シンプルな「心理学」という授業名に魅かれたことも理由の一つです。
A. 1年次に履修していた友人から、「楽しかった」と聞いて履修を決めました。
Q. 印象に残った授業はありますか?
A. すべての授業で日常での具体例を出してくれるので、印象に残りやすい!
A. 人の行動を起こさせる心理学の授業の中で、エスカレーターではなく階段を使用させたい時に、ただ「階段を使ってください」ではなく、「階段を使うと消費カロリー○○kcal」と掲示すると人は歩く、という具体例を聞きました。こうした掲示等は日常でよく目にしますが、そこには心理学的ルールが隠れているという事がおもしろく、印象に残っています。
Q. 英語で書かれた資料はどう感じますか?
A. 英語が得意ではないし、専門用語もあるのでぱっと見た感じでは難しいけれど、先生が説明してくれるので負担には感じません。逆に先生の話を聞いていないと自分で読解するのは大変!授業は一生懸命聞き、たくさんメモをとります。そうすると必ず理解できるし、自分の理解と授業内容がマッチすることがおもしろい!
Q. QRコード読み取りによる出席管理とリアクションペーパーはどう感じますか?
A. 紙よりも書きやすいので、書くことが苦手な学生のことも考えてくれていると思います。
A. 他の授業にはないスタイルで楽しいです。友人と話しながら入力したり、自由に考えられつつも授業を自分でまとめられる機会になっています。
A. 先生は必ず全員分のコメントを読み、悩み事に対しては次の授業で一生懸命答えてくれるので、悩み相談も書きやすいです。
Q. 他の学生へのメッセージがあれば教えてください。
A. 先生が親切ですし、授業内容もとても楽しいです!先生が具体例をたくさん出してくれるので、自分や他人の「どうして?」と思う言動、心理学はすべての日常に関連する、ということがよくわかります。人生のためになることが多いですよ!
A. 自分は騙されないと思っている人、ぜひ履修してみてください。心理学に翻弄されてしまいますよ!
Q. 新井先生へのメッセージをお願いします!
A. 学生のことをよく考えて授業準備をしっかりしてくれている印象です。先生の話してくれる具体例がいつも分かりやすくまとまっていて感謝しています!
A. 心理学を巧みに操る先生は詐欺師に向いていると思う(笑)。
A. 先生が優しくて面白い!
授業の流れ
①資料配付?前回授業のコメントに対する回答 <10分>
②本日のテーマへの導入クイズ<5分>
③本日のテーマ「『経験する自己』と『記憶する自己』」の講義 <70分>
④QRコード読み取りによる出欠とコメント入力<5分>