定行 泰甫 准教授「ミクロ経済学Ⅱ」
大人数講義科目でもできる、協働学習を通じた学生の深い学びへの授業実践!
氏 名 :定行 泰甫(さだゆき たいすけ)
所 属 :経済学部
職 名 :准教授
専門分野:都市経済学/応用ミクロ経済学
対象者 :経済学部2~4年生
授業形態 :講義
単位数 :2単位
曜日?時限:水曜日?2時限
履修者数 :140 名
※黄色にハイライトされた用語はクリックで用語説明が表示されます
【特に活用しているツール】
?Web Class
?Google ドライブ
【授業運営のキーワード】
①反転授業
②ピアチューターによる授業?学習支援
③協働学習(Collaboration Learning)
④ピア?アセスメント(Peer Assessment)
【授業時間外の学習】(シラバスより抜粋)
講義動画、配布資料、関連テキストの内容を読んで講義内容の学び、小テストと課題に取り組む。
【成績評価の基準と方法】
グループ発表 40% +α
個別評価 小テスト 30%、他のグループの発表の要約?アンケートの内容(30%+α)
授業内容
講義の前半7回では、ゲーム理論、価格差別、寡占市場モデルといった「ミクロ経済学Ⅰ」の授業に続く応用的な経済学ツールを学び、後半7回では、グループごとに自分たちで選んだ新聞記事についてミクロ経済学のツールを用いて経済的な分析?解釈を試みる。 沙巴体育ピアチューター制度により授業サポートを目的として配置される学部学生。学生は一定の研修を受けた上で、教員からの申請により、双方向型授業に配置される。
授業の大きな特徴としては、前半の講義7回では、受講者は授業前に WebClassに掲載された講義動画?資料?練習問題をもとに予習し、授業当日は小テストを行い、講義の理解度を確認するという反転授業の形式を取り入れていること、また、既履修者であるピアチューター(PT)を活用しており、PTは受講生と同じ学部生としての立場から教員と協力し、授業運営を行っていることが挙げられる。さらに、後半では、協働学習として受講者は4人以内のグループで課題に取り組んで動画を作成し発表するとともに、他のグループの発表動画を視聴し、発表内容に対するコメントを提出するというピア?アセスメントの手法を導入していることである。
用語説明
ピアチューター(PT)
×
到達目標(シラバスより抜粋)
ミクロ経済学の基礎的な概念を理解し、実際の社会現象について経済学を用いて説明できるようになること。
取材当日の授業の様子(11月9日)
<予習>講義動画の視聴(ナッシュ均衡について)
10:40 ~11:00 講義動画に関する小テスト
11:00 ~11:15 PT によるテストの解説
11:15 ~12:10 教員によるテストの解説?レクチャー
この日は、小テストの後、PT からテストの解説があり、その後、教員からのテストに関する補足の解説およびレクチャーが行われた。レクチャーでは、経済学の理論の説明だけでなく、ノーベル経済学賞を受賞した数学者の伝記映画に触れながら(視聴しながら)、学生の興味を引くような話題を提供し、また、今後の卒業論文の作成に向けた準備等についても話が及んだ。
発表動画作成の手順(第8週~13週)
?動画ファイルは、9分以内、MP4形式で保存
?動画の収録?編集方法は自由
(パワーポイントにナレーションを入れて動画出力、板書やポスターを背景にプレゼンを録画、アニメーションやCG で動画を作成、漫才やコント形式???等)
?発表動画配信日はグループごとに教員が指定
?動画作成?配信スケジュールは以下のとおり
①記事選択(グループ)→配信3週間前の月曜
②資料保存(グループ)→配信2週間前の月曜
※教員は②発表準備資料にアドバイスをコメントし、授業の時間帯は対面での質問や相談に対応
③動画投稿(グループ)→配信前週の土曜
④動画配信(グループ)→配信週の月曜
⑤発表者アンケート(各自)→土曜(発表者のみ)
※自分のグループの動画が配信されない週は、各自、他グループの発表を視聴し、発表内容の要約と順位付けをWebClassに回答
⑥視聴者コメント要約(各自)→土曜(発表者以外)
取材当日の授業の様子(1月18日)最終授業
10:40 ~10:50 授業改善アンケートの実施
10:50 ~12:10 受賞作品の発表と教員からの解説?コメント
この日は、授業の最終日であり、提出された動画49 本のうち、優秀な作品に以下の賞が授与された。
【奥村(PT)賞】
「USJ 学生料金作ってもええんちゃう??」
【定行賞】
「ユニコーン企業の未来」(逐次手番ゲームを使って、銀行の融資行動を分析)
「TDR 繁忙期値上げへ」(成城生にアンケートを取り分析)
【人気投票グランプリ】
金メダリスト「ロシア国民、20 万人国外脱出」
銀メダリスト「コメダ首都圏に出店余地」
この他、視聴者コメント賞特賞3名(ボーナス10 点)、副賞8名(ボーナス5点)の発表があった。
教員インタビュー(Q&A)
Q.どうして反転授業の手法を取り入れているのですか?
A. 完全な反転授業という訳ではありませんが、コロナ禍でのオンライン授業の際に苦労して作成した講義動画をどうにか活用できないかと考え、予習用の教材として利用することとしました。それに加えて、学生はアウトプットしようとするときに知識の定着化が図られるので、予習した内容に関する小テストを毎回の授業で行うこととしています。
Q. グループ発表は、対面で行うのではなく、動画を作成することにしていますが、それはどうしてですか?
A. 履修者が140 名もいて、4人以内のグループを作るとなるとグループ数が膨大となり、対面では全部の発表を見ることができません。そこで、動画での発表を採用したのですが、履修者は様々なWeb ツールを活用して工夫を凝らすなど、教室での発表より面白いものが出てきます。動画を全部CG で作成するグループもありました。
Q. その他、授業で工夫されていることはありますか?
A. 授業改善アンケートでの学生の意見を取り入れたりしています。例えば、当初は、この授業の内容であれば全面オンデマンドでもよいのではないかと思っていましたが、学生から、オンデマンドだとグループで集まりづらいということで、ハイブリッド形式の授業としました。
また、グループの動画作成に関しては、本年度から、作成途中の段階で教員からアドバイスを与え、学生の理解度を深めるとともに、より質の高い発表内容になるよう指導しています。
ピアチューターインタビュー(Q&A)
Q. 授業での業務を教えてください。
A. 前半の講義のパートでは、毎回の授業の冒頭に小テストを行いますが、その後の解説を担当しています。また、WebClass で公開される練習問題を解く補助も行っています。課題や小テストは自分でも一度解いてみて、先生と一緒に解説内容を確認します。小テストの間は、先生と一緒に教室全体を見回ります。履修者の解答状況を確認し、それに応じて先生が全体にアドバイスを行います。
Q. 取材時の解説もとてもユニークでしたが、解説の際に心がけていることを教えてください。
A. 学生側の立場を常に意識しています。解説の前に軽い頭の体操を入れたり、PowerPoint にアニメーションで動きを付けたり、自分自身が学生である強みを活かし「自分が受講生だったらこうすれば注目する、面白い」という内容にしています。
Q. 担当の定行先生はどのような先生ですか?
A. 常に学生をサポートしてくれるという姿勢なので、受講生は安心して学べている様子です。この授業も、学生が主体的に取り組めるような構成なのですが、その分フォローはより必要となります。先生は学生からの質問がどのような内容であっても対応してくれます。
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業のよいところを教えてください。
A. 課題は難しいのですが、授業の前後やWebCalss?メールで先生とPTから丁寧にフォローしてもらえます。先生からはオーソドックスな考え方や経済学のツールの用い方を教えてもらえますし、PT からは学生目線で数式的なものでなく、身近なものと結び付けて解説してもらえるのでわかりやすいです。
Q. グループ発表はどのように取り組みましたか?
A. 最大4人まで任意のチームを作って作業します。あえて1人で取り組む人もいます。私は3人でチームを組み、経済学的分析、PowerPointの作成、ナレーションと役割分担をして取り組みました。大学図書館のヨミダスなどで興味のある新聞記事を探しました。
その記事から最初に自分たちで設定したテーマを経済学のツールに当てはめて考えていたのですが、行きづまってしまい先生に相談したところ、記事から読み取れる別視点のテーマをアドバイスしてもらえました。分析も丁寧に相談に乗ってもらい、納得のいく発表動画を作ることができました。